静岡市では、市内の中山間地「奥静岡」を「オクシズ」という愛称で呼んでいます。静岡市の面積の大半は豊かな自然が残る山間の地域です。そこには、地域特有の風習や催事などの文化、木材やわさび・お茶など人の手と心で育てられた農林産物の数々、急峻な地形につくられた茶畑や棚田といった美しい景観が今もなお残っています。少し車を走らせれば、都市にはない魅力ある豊かな自然と調和した人々の営みの風景に出会えます。
梅ケ島温泉郷は、「梅ヶ島温泉」、「梅ケ島新田温泉」及び「コンヤ温泉」の総称で、日本屈指の清流を誇る一級河川安倍川の最上流域に広がる旧安倍郡梅ケ島村に該当する区域(約92.82k㎡)を言い、静岡市域の約8割を占める中山間地域「オクシズ」の主要な観光地です。
3つの温泉は、梅ヶ島温泉とコンヤ温泉が単純硫黄温泉、新田温泉がナトリウム-炭酸水素塩温泉と泉質に違いはあるものの、アルカリ性でややぬめりのある肌触りは共通しています。いずれも療養効果が高く、神経痛や皮膚炎、関節痛、婦人病などへの効能があり、今でこそ減少傾向にあるものの多くの湯治客が訪れていた記録が残っています。
特に、梅ヶ島温泉の湯治場としての歴史は古く、戦国時代から開湯していたとの記録があり、梅ケ島金山を巡る今川氏と武田氏の合戦が終了して梅ヶ島温泉周辺を武田氏が支配してからは、「信玄公の隠し湯」として、合戦で傷ついた侍の療養所であったとも言われています。
豊かな自然環境は特徴ある美しい景観を作り出しており、日本三大崩れの一つにも数えられるダイナミックで荒々しい山地崩壊「大谷崩れ」や、主要観光スポット安倍の大滝、赤水の滝を含む「梅ケ島七滝」などの変化に富んだ渓谷美はその代表格である。さらに、11 月上旬から中旬にかけては、ブナやミズナラ、カエデなどの紅葉がその魅力を一層引き立て、これらは来訪者を楽しませる主要観光資源となっています。